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主人公は、40歳/未婚/カレシなし/会社員/高齢の両親と同居(たぶんひとり娘)の、ヒトミさん。
ある時、モテ期がきた。会社の後輩の14コ下・26歳のマカベくんと、大学時代にちょっと好きだった岡くん(バツイチ)に同時にアプローチされるのだ。マカベくんに好意をもたれて得た「女としての自信オーラ」が、語らずとも岡くんに伝わったのだろう。
自分に選択権があることに浮足立つヒトミさん。岡くんとはゴハンには行ったきりフェードアウトし、マカベくんと正式に付き合うことになる。秘密の社内恋愛にドキドキしたり、デートも楽しいのだけれど、マカベくんに合わせて若めの洋服を選ぶ自分をいやだと感じたり、「自分の年齢を自分が否定すんのって疲れるな」とつぶやいたり…。
そして、自分の状況を俯瞰して見ることも。
わたしは、恋にではなく、自分自身に酔っているのかもしれません。
マカベくんは結婚したいタイミングだったのかもしれない。ヒトミさんはうやむやにしてしまうのだけれど…。
実家から独立してひとり暮らしを計画するマカベくん。
「ヒトミさんも遊びに来られるし。なんなら、一緒に暮らさない?」
「とりあえず、遊びに行くよ」
「だね、来て来て」
そうこう言っているうちに、突然、福岡に転勤になったマカベくん。
「ヒトミさん、一緒に来ない?福岡」
「急にはむずかしいよ」
「そっか、そうだよね。週末はできるだけ帰ってくるし福岡にも遊びに来て」
「うん、案内して!」
「するする」
そして遠距離恋愛は、ヒトミさんの予想どおり、長くは続かなかった。
その後も、マカベくんは時々は東京に出張で来て、ふたりはふつうの同僚モードで軽い挨拶くらいはする。
ヒトミさんは、いずれ、マカベくんがどこかの誰かと結婚することを知らされるのだろう…と覚悟をしている。
それすら、なんかちょっとしたイベント、とか思っているわたしがいる。
…わかる…。
それにしても、両親が老いていくこと、そして自分の心身も(良くも悪くも)年を重ねている現実をを、容赦なく突きつけられる細かいエピソードたちが実に巧い。
それと、岡くんは、選ばなくてよかった。軽過ぎ。