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「成瀬は天下を取りにいく」の待望の続編。今回も面白かった!
北川みらいちゃん(大津市立ときめき小学校4年)は、成瀬との出会いによって、人生における「大切なこと」を習得した。大きくふたつ。
ひとつめ。みらいちゃんの質問。
「成瀬さんは将来何になるんですか?」
漫才も司会もできて、パトロールが趣味で、京大を目指すほど勉強が得意な人は将来何になるんだろう。
成瀬が答える。
「先のことはわからないから何とも言えないが…。何になるかより、何をやるかのほうが大事だと思っている」
「たとえばわたしはパトロールを好きでやっているが、警察官になりたいとは思っていない。会社員になったとしても、パトロールはできるだろう。だからわたしが何になるかは未定だが、地域に貢献したいとか、人の役に立ちたいとは思っている」
相手が子どもでも礼節をもって誠実に回答する成瀬。かっこいい。発想がかっこいい。「何になるかより、何をやるかのほうが大事」…元気づけられる。
大学入試が終わるや、成瀬は地元のスーパーでレジのバイトを始める。篠原かれん(後述)に「京大生なのに?」「京大生は家庭教師とか塾講師とかやってるイメージ」と言われて「そうか?少なくともわたしは人に教える仕事はできない。問題を見たら一瞬で答えがわかってしまうから」と答えたのはザ・成瀬節だったが…地元のスーパーは、なるほど地域貢献性が高い。
ふたつめ。
「ときめき地区で活動している人」を調べるグループ学習で、みらいちゃんはゼゼカラ(成瀬と島崎の幼馴染漫才コンピ)をテーマにすることを提案し、親友の結芽ちゃんも賛同してくれた(ように見えた)。が、みらいちゃんのいないところで、他の子たちに、みらいちゃんが勝手にテーマを決めてしまったとか、会ってもらった成瀬のことを小ばかにするような言い方をしていた…。
ショックでひとり泣きながら下校するみらいちゃんを見つけた島崎が、率直に伝えた言葉が良かった。
「実際成瀬は変だし、結芽ちゃんが成瀬を変だって友だちに話すのも自然だと思うんだよね。別にそれはゼゼカラを選んだみらいちゃんのことが嫌いになったわけじゃないし、そういう意見の人もいるってことじゃないかな」「だけどまあ。自分の好きな人とか物をけなされると嫌な気持ちになるのは間違いないね。気にしないようにするしかないかも」
後日、無事発表を終えたとき、みらいちゃんの心はすがすがしく静かだった。
結芽ちゃんはあの後も変わりなかった。本当はゼゼカラやわたしのことをよく思っていないのかもしれないが、好きになってほしいとお願いしてもしかたない。成瀬さんたちが言っていたみたいに先のことはわからないから、結芽ちゃんが成瀬さんを好きになることもあるかもしれないし、全然別のところで成瀬さんを好きな仲間が見つかるかもしれない。
「僕も今度成瀬さんを見かけたら話しかけてみよう」
たいちゃん(注:同じグループの男子)の言葉に、わたしもうれしくなる。成瀬さんを好きな人もいれば、嫌いな人もいる。成瀬さんならどっちの人も助けるに決まってる。
バランスのとれた島崎の考え方に触れて、視野が広がり、自分で自分を変えたみらいちゃん。頼もしい…。
「コンビーフはうまい」の新キャラ・篠原かれんのユニークさも際立っていた。
「びわ湖大津観光大使」に就任した成瀬(適任!)の、同僚の、一つ年上の篠原かれん。そもそもかれんの家族自体が、成瀬の家よりよほど変。祖母→母→かれん、と、三代連続でびわ湖大津観光大使(任期1年)の役を担うという記録樹立のために妙にやっきになる家族…。
おばあちゃんとお母さんは、前代未聞の三代連続観光大使を目指すことにした。びわ湖大津観光大使の座を確実にするために重要なのは見た目とコネだと考え、男前と評判だった市議会議員の息子と結婚。長男が生まれた後にめでたく授かったのがわたしである。
わたしは小さな頃から大津市内や近郊の観光スポットに連れていかれ、あらゆるうんちくを叩き込まれた。観光大使としての受け答えや立ち居振る舞いといったマナーも完璧だ。外国人にも対応できるように、小さい頃から英会話教室に通って日常レベルの英会話を身につけた。
…ってすごすぎ。かれんも子どもの頃から歴史の勉強のために自主的に大河ドラマを視聴してたりしていたが、観光大使になるという夢がかなって以降、次の目標が見つからない。
その一方で、おばあちゃんとお母さんは、次は四代目!と、まだ大学生のかれんに見合い話を持ち込み、産まれてもいないかれんの娘に「観光大使の中でも目立つように、小さい頃から一芸を身につけさせよう」と策を練り始める始末。
しかし、観光大使としてのかれんの活動を助けたのは、痛快にも、裏キャラである鉄道オタクの知識だったし、屈託のないかれんは、変わり者の成瀬ともどんどん仲良くなっていく。今後、成瀬と長い相棒になりそうな予感がする。
最後の「探さないでください」も良かった。
部屋からなくなっていたものから、成瀬の行先はちょっと早めにわかってしまったが…外出の詳細について成瀬が頑なに語らなかった理由、スマホを自宅に残していった理由までは想像が至らなかった!
2025年の年末の設定なので未定(現在2024年7月)なのだが、三山ひろしは白組の何番目に歌ったのか。それを終えて2025年12月31日の23:59に大津の自宅まで帰ることは現実的に可能なのか、という疑問もあり(いや、現実じゃないし、細かいことはイイんですけど)。
…下記の男子3人にも注目している。伏線を張ったのだから、まだまだ続いて、それらが斜め上から回収されるのを期待している。
≪高知出身の城山君≫
京大の二次試験初日の試験後、大雪の中、大学の構内でテントを設営していところを通りがかりの成瀬父子に救われ、一緒に電車に乗って大津の成瀬宅に行き、廊下で一晩を過ごし、2日目は成瀬と一緒に試験に向かった。「3,000円で高知から京大入試に行ってみた」という企画を実行中のYouTuberで、ひょうひょうとしたキャラだが、実は去年、一家離散して現在は祖父母宅で世話になっている…という、実は深い事情のある少年。合格発表(工学部に合格!)の日以来登場していないが、今後、成瀬と同じ大学に通うのだ。
※成瀬宅滞在中に、お茶をすすめられても、「飲み物と食べ物はお金を出して買うルールだから」とYouTubeの企画を理由に躊躇する城山君に対し、「サービスエリアにだって無料で飲めるお茶があるだろう」と切り返す、成瀬の優しさ・シャープさが、良かった。「それもそうだね」とあっさり寝袋から出てリビングに入る城山君も、良かった。
≪広島の西浦君≫
成瀬のセリフ「広島に住んでいる友達が京都の大学を受験して一人暮らしをする…」の友達は「成瀬は天下を取りにいく」で琵琶湖の観光船ミシガンに乗ったあの西浦君だろう。日程の早さからしてどこか私大なのだろうけれど、同じ京都市内の大学に通うのだ。…成瀬は大学入学までスマホを持っていなかったので、家電(いえでん)もしくは文通での交流を続けていたのだなあ♡
≪篠原かれんの、東京在住の兄・裕介≫
祖母と母の「三代(四代!)連続びわ湖大津観光大使」への執着にうんざりしている。そして自分もおそらく、「三代連続大津市議会議員」になりたいわけではない。
おとなしくて何を考えているのかわかりにくいのだが、実は妹の個性の尊重を願い、応援している。
東京には島崎が住んでいるし、頻繁に大津に帰省している様子。今後何かがあるかも!?